報道記事

元気いっぱい響けこの音

京都の太鼓サークル、

全国大会出場

10月の大会に向け、熱のこもった練習をする子どもたち(奈良市左京・市総合福祉センター)
10月の大会に向け、熱のこもった練習をする子どもたち(奈良市左京・市総合福祉センター)

 京都府木津川市を拠点に活動する太鼓サークル「山城ノ国 和太鼓 鼓粋(こいき)」が、10月5日に大阪府大東市で開かれる「日本太鼓全国障害者大会」に初めて出場する。障害のある子どもたちを含む12人のチームが「元気いっぱい演奏したい」と大舞台に向け練習に励んでいる。

 「鼓粋」は日本太鼓財団公認指導員資格を持ち、大阪市内の知的障害者施設などで指導経験のある岡田博勝さん(63)=木津川市=が2010年に結成した。

木津川市や奈良市の小中学生や障害児らが週末、一緒に練習している。

 障害児の入った混合チームは長時間集中力を保つ難しさなどから大きな大会への参加はなく、老人ホーム訪問や地域の催しでの演奏が中心だった。

今回は、日ごろの活動が評価され、大阪支部推薦で出場が決まった。

 大会で演奏するのは、男女やきょうだいでの掛け合いが特徴のオリジナル曲「岬の灯台」。全員にソロパートがある。また、演奏中に立ったり座ったりするため、息を合わせる必要がある。練習日は全員一緒に食事し、上級生が下級生に宿題を教えるなどして信頼関係を深めてきた。

 代表の東野恵之さん(49)は「障害のある子どもも、たたく技術は見劣りしない。所作を徹底して教えたい」と意気込み、「技術の向上や大会での演奏を通じて達成感を感じ、今後の生活にもつなげてほしい」と願う。

       

                   【2014年9月12日 京都新聞朝刊より】

 

 


【京都府木津川市広報誌に掲載されました】


        【脳梗塞越え片手で"ドン"】       

  子供たちに和太鼓指導

「仲間たちを励ましたい」と右手だけで子どもたちと演奏に励む岡田さん(奈良市・市総合福祉センター)
「仲間たちを励ましたい」と右手だけで子どもたちと演奏に励む岡田さん(奈良市・市総合福祉センター)

 

 京都府木津川市を拠点に障害のある子どもや地元の小中学生に太鼓の指導を続けてきた岡田博勝さん(62)=同市木津=が1年前に患った脳梗塞から復帰し、再び教え子たちの前に立ち、演奏に励んでいる。かつての力強い響きは取り戻せないが、「リハビリを続ける仲間たちの目標になりたい」とばちを握る。

 

 約20年前に城陽市の太鼓教室の門をたたき、本格的に和太鼓を始めた。2005年に日本太鼓連盟(東京都)の公認指導員3級の資格を取ると、大阪市内の知的障害者施設で指導を始めた。3年前、木津川市を拠点に活動する「山城ノ国和太鼓鼓粋(こいき)」を結成。市内や奈良市の小中学生に、太鼓の魅力を伝えてきた。

 

 高い演奏技術力と豊富な指導経験が評価され、昨秋には同連盟の指導員資格で最高位の1級指導員に認定された。「指導者としてこれからと思っていた」昨年12月。突然、左手に力が入らなくなり、立ちあがれなくなった。徳島県での太鼓指導から帰ってきた晩の出来事だった。

 

 妻・光子さん(62)に病院へ運ばれ、3日間集中治療室に入った。左半身の一部がまひし、言葉もうまく出せなかった。一般病棟に移り、約2カ月後に歩けるようになったが「何も気力が起きなかった」という。

 

 見舞いに来る子どもたちやリハビリ仲間に背中を押されるように、一時外出で教室を訪れた。ばちを握れる右手で精いっぱい太鼓を打ち鳴らした。ドン。響いた音に涙がこぼれた。「まだまだの音やったけど、うれしかった」

 

 今年5月の退院後、教室の運営は教え子の父親、東野恵之さん(48)=木津川市木津川台=に託したが、毎月の練習には顔を出す。左手は思うように動かず、両手での演奏ができないが、共にリハビリを続ける仲間を励ましたいと右手一本でばちをふるう。

 

 「胸に響く太鼓の音を聞くと力をもらえる。車いすや片手しか動かない人でも楽しめる曲を作り、前を向く勇気や元気を与えたい」と夢を描く。

 

 

「2013年12月31日

      京都新聞より」